Bathyscaphe - Jotok

Bathyscaphe(バチスカーフ)とはフランスの深海探査艇。パリの深淵より常徳堂がお届けします。

美術市場の規模ってどのくらい?

 美術品には芸術的・文化的な側面だけではなく、価値変動が起きにくい資本としての側面がありますが、日本では未だ美術品に対する投資は一般的と言い難いのが現状です。クリスティーズやサザビーズ等、公の場での美術品取引が盛んな欧米では、それらの価値や価格がより明示化されているということもあり、美術品が銀行融資の担保としても広く利用されています。
 
 バブル崩壊、2009年の経済危機、2011年の東日本大震災は日本の美術市場に大きな影響を与えましたが、現在の国内市場の規模はおよそ1000億円程度といわれています。この数字はなんと世界の美術市場の1.67%でしかありません。このような美術品=資本としての役割を日本でもより浸透させることは、国内の美術市場を成長させる上で欠かすことができない今後の課題といえるでしょう。
 
 

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©TEFAF.com
 

TEFAF

 3月23日までオランダ、マーストリヒトで開催されているアートフェア「TEFAF」。スイスの「アートバーゼル」やアメリカ版バーゼルこと「アートバーゼル・マイアミビーチ」、フランスの「FIAC」と並ぶ世界最大級のアートフェアであり、世界の美術市場を牽引しているアートフェアのひとつです。
 その歴史は古く、1975年、ピクチュラ・ファインアートフェアという名前で、オールドマスターの絵画や中世彫刻を専門とするビエンナーレとして始まりました。1991年にはアンティークだけでなく、「現代美術部門」も設立されます。現在はさらに「デザイン部門」が併設され、「アンティーク」「現代美術」「デザイン」を中心とした総合的なインターナショナル・アートフェアとなりました。開催当初は28程の出展者が中心でしたが、回数を重ねるごとに出店者・来場者ともに数を増し、現在では295の出展者と10の展覧会、10日間に及ぶ開催期間中は70,000人を越えるコレクターや目利き、キュレーター、そしてその他の美術愛好家で賑わいます。
 

Art Market Report 2014

 TEFAFはアートフェアを開催するだけでなく、2000年より他の専門機関と共同でヨーロッパにおける美術市場の規模や構造の研究を行い、現在はさらに国際的な美術市場を対象にした『Art Market Report』なるものを発刊しています。TEFAFの2014年次報告書『Art Market Report 2014 - The Global Art Market with a focus on the US and China』が2013年の美術市場を総括しているので、KunstpediaBloombergの記事を参考にざっくりとご紹介します。
 
 

美術市場の景気は順調

Sales of art and antiques increased 8 percent from a year earlier to 47.4 billion euros ($65.9 billion), according to a report compiled by Arts Economics and published today by the European Fine Art Foundation in Maastricht, Netherlands. The results fell just short of the record 48 billion euros in 2007.
 アート・エコノミクスが作成し、マーストリヒトのヨーロッパ美術財団が発表したレポートによると、 2013年の美術品や骨董品の売上は474億ユーロ(約6.7兆円)となり、2012年に比べて8%増加しました。この数字は好景気に沸いた2007年の記録、480億ユーロに迫る結果となりました。
 
The value of postwar and contemporary art transactions increased by 11 percent from 2012, reaching its highest-ever auction sales total of 4.9 billion euros as records were established for artists such as Francis Bacon, Roy Lichtenstein and Andy Warhol. Boosted by a 25 percent increase in sales, the U.S. confirmed its position as the international art market leader, representing 38 percent of the market by volume, a 5 percentage point increase from 2012, according to the report.
 フランシス・ベーコンやロイ・リキテンシュタイン、アンディ・ウォーホル作品の記録的な落札の影響もあり、戦後・現代アートの取引は前年比11%増の49億ユーロ(約6916億円)。アメリカでは全売上げが25%増、美術市場全体の38%(前年比+5%)を占める結果となり、世界の美術市場を牽引するリーダーとしての地位を確立しました。
 
 

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フランシス・ベーコン『ルシアン・フロイド 三部作』1969
©Christie's Images LTD. 2013
 
The recent rally marks a rebound from 2009, when global art sales had contracted to 28.3 billion euros. With asset prices rising worldwide since then, a growing number of millionaires and billionaires worldwide has been buying art, according to the report. There were 32 million millionaires globally last year, of which 42 percent were based in the U.S. At least 600,000 of the global group are mid-to-high level art collectors, the findings show.
 最近のこの相場の上昇局面は、世界の美術市場が283億ユーロ(約4兆円)に緊縮した2009年からの回復を示しています。報告書によれば、それ以来、資産価格の上昇と共に増え続ける世界中の億万長者が美術品を買っているとのこと。2013年には世界に3200万人の億万長者が存在し、その内の42%は米国に集中していました。その内、少なくとも60万人は中高レベルのアートコレクターであると、調査結果は示しています。
 
“Most high priced works in postwar and contemporary art are being sold in New York, both at auctions and in dealer sales,” Clare McAndrew, a cultural economist who compiled the report, said in a telephone interview. “It’s not just the U.S. buyers. People from Latin America and Asia are buying in New York.”
 報告書をまとめたアート・エコノミクスの創設者であり文化経済学者のクレア・マクアンドリュー博士は、電話インタビューで「オークション、ディーラー間取引の両方において、戦後・現代美術のほとんどの高価な作品はニューヨークで売買されている。買い手はアメリカ人のバイヤーだけではなく、ラテンアメリカやアジアのバイヤーもニューヨークで取引している。」と語ったそうな。
 
 

China’s Role - 中国の役割

 中国は依然、美術市場における最大の新興国です。2011年には美術品の取引額が一時的に米国を上回りましたが、その後は再び第二位に転落、市場全体の24%(前年比-2%)を占めています。イギリスは20%(前年比-3%)を占め、第三位を維持しています。
 

‘Persistent Problems’ - 繰り返される問題

Some of the “persistent problems” plaguing the Chinese art market include late and non-payment by winning bidders at auction, according to the report. A high percentage of unsold auction lots -- 54 percent of all lots offered in mainland China and 44 percent in Hong Kong -- has also dampened the market, indicating resistance to works buyers perceive as “over-priced or not the best examples by the artists,” as well as issues of provenance and authenticity, according to the report.
 報告書によると、中国のアート市場を悩ませている「やっかいな問題」の一つに、オークションでの落札者による未払い、不払い問題があります。香港では44%、中国本土では55%にも及ぶ売れ残りの割合もまた、中国の美術市場の勢いを弱める原因の一つといえるでしょう。購入者が商品に対して抵抗を示す要因としては、「設定価格が高すぎる」あるいは「作家の最良作品ではない」ということだけでなく、作品の来歴や本物かどうかといった信頼性の問題もあげられます。
 
 

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©TEFAF.com
 

Online art market - オンライン・アートマーケット

Online sales, a small but rapidly growing segment of the market, generated more than 2.5 billion euros in 2013, the report showed.
“It is estimated that the online art market, including online sales by auction houses, dealers and online-only companies, could grow at a rate of at least 25 percent per annum, meaning that they could exceed 10 billion euros by 2020,” the report found.
 レポートによれば、小さな市場とはいえ急速に成長しているオンライン・マーケットの規模は、2013年時点で25億ユーロ以上(約3500億円)に上りました。
 「オークションハウスによるインターネット競売、オンラインだけで運営している企業やディーラーによるインターネット販売を含むオンライン・アートマーケットは、年率25%以上の割合で成長したと評価されており、これは2020年までに市場が100億(1.4兆円)ユーロを超える可能性があることを意味している」と報告書は判断しています。
 

美術市場の発展

“After recovering strongly in 2010, the global art market has experienced mixed performance within different sectors and between nations,” says Dr McAndrew in the report. “The much more moderate growth in sales over the last three years reflects the fact that different areas of the market have been recovering at different rates. Some sectors and individual businesses have reached peaks well in excess of those achieved in 2007, while others are still struggling to regain momentum.”

 マクアンドリュー博士いわく「グローバルな美術市場は、2010年に大きく回復した後、様々な部門、異なる国家間で種々雑多な動きをみせている。その後三年間のはるかに緩やかな成長は、市場の様々な領域がそれぞれ異なる速度で回復しているという事実を反映しています。いくつかの領域では個々の企業が2007年の業績を上回る結果を出す反面、その他は勢いを取り戻すのにまだ苦労を強いられている。」
 
“The global art market as a whole is less susceptible to major contractions,” McAndrew said. “It’s more diversified. Since the downturn, it’s been up and down for different sectors and different countries.”
「全体的にグローバルな美術市場というのは、深刻な経済的縮小の影響を受けにくい。美術市場は以前より多様化している。かつての低迷以来、様々な部門で、異なる国々で、市場は発展したり縮小したりしている。」
 
以上、アート・マーケットに関する報告でした。
 
『Art Market Report 2014』はTEFAFのサイトにて20ユーロで購入することが出来ます。デジタル版は3月末に出版予定とのこと。