Bathyscaphe - Jotok

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アルブレヒト・デューラー 二つの『野うさぎ』

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ドイツのルネサンス期を代表するイケメン画家、アルブレヒト・デューラー。

彼が残した謎多き絵画『野うさぎ』には二つのバージョンが存在します(下図)。左がデューラーのオリジナル、右はハンス・ホフマン(16世紀の画家 Hans Hoffmann、20世紀の抽象画家 Hans Hofmannではない)による模写。これまで、それぞれ異なる場所で保存されていましたが、その二つが時を同じくしてウィーンブレーメンで展示されるとのこと。

ホフマンの模写は1億4000万円ほどで売りに出されるそうです。2008年に58万€で手に入れたこの模写を、2014年の現在100万€で売却しようというのは無謀な気もしますが、どうなることでしょう。近年、美術市場の景気は決して悪いとはいえません。日本にはデューラーの作品が極めて少ないように思いますが、ホフマンの模写でも構わないという方、いかがですか?

以下、The Art Newspaperの記事をざっくりと訳しています。

 

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           Dürer’s Hare, 1502                                      Hoffmann’s copy, from 1582
 
©The Art Newspaper
 

 

Splitting hares: a Dürer double bill
Two versions of leporine painting go on show in Vienna and Bremen
By Martin Bailey. Web only
Published online: 13 March 2014
割れる『野うさぎ』:二つのバージョン
二つのよく似たバージョンがウィーンとブレーメンで展示
 
 
Two versions of Dürer’s Hare are emerging, quite by chance, at the same moment—although only one is the real thing. For over four centuries, two watercolours have shared the limelight, each regarded as an original by Dürer at different times.
The version now accepted as authentic, which is rarely shown for conservation reasons, goes on display at the Albertina in Vienna on 14 March. It will be in an exhibition on the history of the gallery (until 29 June). Another watercolour, now regarded as a later copy by Hans Hoffmann, is being offered for sale by the Bremen-based Neuse Galerie for around €1m. 
 
二つのバージョンのデューラーの『野うさぎ』が、偶然にも時を同じくして話題となっています。ー オリジナルは一つだけですが。4世紀もの時を超えて、この二つの水彩画は共に脚光を浴び、どちらも真作と見なされていました。現在、本物として認定されたバージョンは、保存上の理由から滅多に公開されることはありませんが、3月14日よりウィーンのアルベルティーナ美術館で展示される予定です(6月29日まで)。もうひとつの水彩画は、ハンス・ホフマンによる模写だとされており、ブレーメンのニュース・ギャラリーが約100万€で売りに出しています。
 
 

Right from the start, Dürer’s Hare, 1502, was the stuff of legend. One source claimed that the artist had saved the animal during a flood, another that he had modelled his drawing on a cat. A more likely story relates to Dürer’s meeting with Giovanni Bellini in Venice, when the Italian master asked to see the special brush he had used to paint the fine detail of the animal. Dürer offered Bellini several quite ordinary brushes asking him to take his pick; it was Dürer’s skill, not equipment, which accounted for his success. 

 
そもそもデューラーの『野うさぎ』は伝説上の作品でした。その伝説というのは、ひとつにはデューラーが洪水の際に動物を救ったという話。もうひとつは、彼は猫をモデルに『野うさぎ』を描いたのではないかというもの。最も有力な説としては、ヴェニスでのジョヴァンニ・ベッリーニと交流が挙げられます。デューラーが使用しているという動物の細部を仕上げるための特別な絵筆を見せてほしいとベッリーニが頼んだところ、デューラーはベッリーニにごく普通の絵筆を渡しました。デューラーが画家として成功したのは絵筆が特別だったからではなく、彼の技術が素晴らしかったからだという話。
 
 

After Dürer’s death, his original watercolour passed to a Nüremberg family before being acquired by Holy Roman Emperor Rudolf II in 1588. It remained in the imperial collection and is now at the Albertina.

 
デューラーの死後、彼のオリジナルの水彩画は、1588年に神聖ローマ皇帝ルドルフ二世に買い取られる前に、ニュルンベルクの家族の手に渡りました。絵はそのまま皇室コレクションとして残り、現在はアルベルティーナ美術館が所蔵しています。
 
 

Hoffmann’s copy, dating from 1582, was once regarded as an original by Dürer. The watercolour was only downgraded and firmly reattributed to Hoffmann in 1876. It was eventually donated to the Bremen Kunsthalle, and in 1945, it was plundered after Soviet forces entered Germany. In the mid-1990s, Hoffmann’s copy turned up with a Belgian businessman, who had received it from a Russian trader. It was then put up for auction at Lempertz in Cologne in 1999, which led to a restitution claim from the Kunsthalle. 

 
1582年に描かれたホフマンによる模写は、かつて一度、デューラーによるオリジナルだとされていたことがあります。その後、格下げされ、1876年には確固としてホフマンによる模写だとされました。この『野うさぎ』は、やがて、ブレーメン美術館に寄贈されましたが、1945年にソビエトがドイツに侵攻した後に略奪されてしまいます。1990年代半ば、ロシア人の業者からベルギー人の実業家の手に渡りました。その後、1999年にケルンのLempertzで競売にかけられ、それがきっかけとなりブレーメン市立美術館からの返還請求に繋がりました。
 
 

A deal was struck, and the Kunsthalle’s claim was dropped in return for half the auction proceeds. Hoffmann’s Hare sold in 2008 for €580,000, going to Galerie Neuse in Bremen. Galerie Neuse has just offered it for sale, in a full-page advertisement in the February issue of The Burlington Magazine. 

 
オークション落札価格の半分を美術館に支払うという形で要求は退けられ、幕を閉じました。2008年には58万€でニュース・ギャラリーに売却されています。そのニュース・ギャラリーが今度はバーリントン・マガジンに全面広告を使って、ホフマンの『野うさぎ』を売りに出しています。