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間違って捨てられた現代アート作品

「芸術作品」と「そうでないもの」の違いとは一体何でしょうかね。とりわけ「現代アート」に関しては、非常にやっかいな問題であります。多くの人の心をつかむ作品もあれば、「入場料返せ!」と叫びたくなるような展覧会もあります。「一体これの何が芸術か」と問いたくなることも多々あるでしょう。

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先週、南イタリアのバーリにある現代アート・ギャラリー「Salat Murat」で開催されていた「Display Mediating Landscape」展で、掃除婦の女性によって、ゴミと間違えられた作品が捨てられてしまいました。作品を制作したのはニューヨークを拠点に活動しているというアーティストPaul Brancaさん。地元紙によると、先週水曜日の朝、ギャラリーから二つの作品がなくなっていることに気付たセキュリティ担当者が、それらをゴミ箱から発見したということです。

作品は新聞紙やダンボール、欠けたビスケットなどを床に散在させたもの。

「一体どうやって知ることが出来たというの?悲しいけど、私は自分の仕事をしただけ。」という掃除婦の言い訳に対して、ギャラリー側は「非常に遺憾に思う。彼女は作品とその価値を台無しにしてしまったことを分かっていない。」と非難。それと同時に「アーティストは周囲の環境と相互作用するという、現代美術の意味をより良く解釈できる一件となった」とも述べています。

被害にあった二作品の価値は約150万円とされていますが、全額保険でカバーされるそうです。

 

芸術作品がうっかり捨てられるというのは、これまでにも何度かあったようです。

  • 1978年のヴェネチア・ビエンナーレでは、マルセル・デュシャンの作品(シンプルなドア)をうっかり塗り直しました。
  • 1986年、ドイツ人アーティストのJosef Beuysによる作品(汚れたバスタブ)がデュッセルドルフで展示されましたが、熱心な掃除婦によってピカピカに掃除されました。
  • 1999年には、ロンドンのテート・モダンで展示されていたトレーシー・エミンによるインスタレーション作品(無造作なベッドと下着、使用済み避妊具)を見た美術館のスタッフが、作品が何者かによって破壊されたと勝手に勘違いして、ベッドメイキングしました。
  • 2001年にはロンドン西部のギャラリーに展示されていたダミアン・ハーストの作品(積み重ねられた灰皿と新聞、汚れたビール瓶)が、作品だと思われず、掃除の人が片付けました。
  • 2004年には、またもやテート・モダンで、ドイツ人アーティストGustav Metzgerの作品が捨てられました。やはり、紙とダンボールの集積物でした。

 

このように、世の中にはゴミともつかぬ「現代アート作品」が溢れているわけです。

しかし、それらの中にも、将来、美術史において永遠に語り継がれる作品があるのでしょうね。きっと。