Jotok 旧ブログ

新ブログは右のJotok-常徳堂へ。

ギュスターヴ・クールベ 「画家のアトリエ」修復へ

 昨年2013年9月、フランス・パリのルーブル美術館は《サモトラケのニケ》の修復とニケが展示されていたダリュの階段の大規模な改修工事を開始しました。合計6700名にも及ぶ支援者に手により、修復費用は目標金額の100万ユーロ(約1億4000万円)を達成しました。ダリュの階段の改修工事は2015年春に終了予定とのことですが、ニケの修復の完了間近。そもそもこの修復は、これまでのニケの彫像に関する研究・解釈を覆す新たな発見に端を発するのですが、詳しくは同美術館の特設サイトで御覧ください。
 
 
L'Atelier du peintre
 さて、修復といえば先日、オルセー美術館がかの有名な絵画の修復を発表しました。しかし、世界中の他の美術館同様、お金が足りないので絶賛メセナを募集しています。本日は同美術館から届いたお便りをご紹介します。
 

f:id:jotok:20141018004803p:plain

Gustave Courbet (1819-1877), L'Atelier du peintre. Allégorie réelle déterminant une phase de sept années de ma vie artistique et morale, Entre 1854 et 1855, Huile sur toile, H. 361 ; L. 598 cm, Paris, musée d'Orsay
© RMN-Grand Palais (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski
 
 
Acquis par l'État à l'aide d'une souscription publique en 1920, le tableau L'Atelier du Peintre (1854-1855) de Gustave Courbet est un chef-d'œuvre universel qui fait partie de notre patrimoine culturel. Après avoir traversé plus d'un siècle d'histoire mouvementée, cette toile de 22 m² a maintenant besoin d'être restaurée. 
 1920年、公的な募金によって政府が入手したギュスターヴ・クールベの絵画「画家のアトリエ」はフランスの文化財の中でも世界的な傑作といえるでしょう。100年という激動の歴史を経て、現在この22m²のキャンバスは修復を必要としています。
 

Ce trésor appartenant à tous, le musée d'Orsay fait de nouveau appel à la générosité du public pour aider au financement de sa restauration et permettre au plus grand nombre de participer à ce projet, au-delà des mécènes traditionnels. Exceptionnellement, l'œuvre sera restaurée sur son lieu d'exposition et les visiteurs pourront suivre l'évolution du travail des experts au quotidien, pendant plusieurs mois.

 

 万人の宝ともいえるこの絵画ですが、オルセー美術館はこの度、これまで伝統的なメセナ活動を超えて、さらに多くの人々がこの傑作の修復費用に関して寄付を行うことができるよう訴えを新たにしました。例外的に、作品は公共の展示場で修復されることとなり、美術館への訪問者は数ヶ月間に渡り、専門家による修復の過程を垣間見ることが出来ます。
 
 美術品や文化財の保護、保存、修復、研究、展示、教育は美術館の使命でありますが、そのためには莫大の費用が投入されており、その費用をいかに捻出するかというのは訪問者数世界一を争うような有名美術館にとっても悩みの種といえそうです。
 
 
 
 

ホテル・ルテシア 3.7億円の売り上げに

 

f:id:jotok:20140604120058j:plain

© FRANCOIS GUILLOT/AFP

ホテル・ルテシアの競売も無事に終了し、オークションの歴史に新たなページが書き加えられました。同時に、今後三年にも及ぶ大改装を迎えたホテル・ルテシアは、これから新たな歴史を歩み始めることになります。

フランスのメディア、ouest-franceの記事をざっくり訳しています。

La vente du mobilier, d'oeuvres d'art et de bouteilles de vin prestigieuses, mis aux enchères cette semaine par le mythique hôtel parisien Lutetia, qui a fermé mi-avril pour rénovation, a rapporté au total 2,667 millions d'euros (frais inclus), légèrement au-delà des estimations.

"Je suis content de la vente, nous avons fait sans problème un peu plus que l'estimation haute", a déclaré le commissaire-priseur Antoine Godeau, A titre de comparaison, la vente du Crillon, en avril 2013, avait rapporté près de 6 millions d'euros (frais inclus).

Selon Antoine Godeau, "il y a eu un vrai engouement de la part des gens qui sont venus acheter des souvenirs". Des fauteuils gondole, qui meublaient les chambres, se sont ainsi vendus près de quatre fois l'estimation initiale. Première pièce mise en vente, un torse en bronze du sculpteur César, estimé à 20 000 €, a été adjugé à 38 640 € (avec frais).

 

 改装のため今年四月に門を閉ざしたパリ随一の荘厳なホテル・ルテシアで行われた家具、美術品、高級ワインのオークションは、266万7000ユーロ(手数料込み・約3億7260万円)を売り上げ、予想価格の合計を少し超える結果となりました。

 ピエール・ベルジェ&アソシエ(オークション会社)の主任競売吏アントワーヌ・ゴドー氏は「競売も問題無く終わり、予想を少し上回る結果となったことに満足している。」と述べました。ちなみに、2013年にパリのコンコルド広場に建つホテル・ドゥ・クリヨンで行われた同様の競売は600万€(手数料込み・約8億3800万円)を売り上げました。

 アントワーヌ・ゴドー氏いわく「この度の競売には、ホテル・ルテシアとの思い出を買いに来てくれた人々の純粋な情熱がありました」。客室を飾っていたイージーチェアなどは落札予想価格の4倍近い価格で落札されました。ロットナンバー1の彫刻家・セザールによるブロンズは2万ユーロと予想されていましたが、最終的には3万8640ユーロ(手数料込み・約540万円)で落札されました。

f:id:jotok:20140604120116j:plain

 

© Pierre Bergé & associés

ホテル・ルテシア、いよいよオークションへ

前回の記事で紹介したパリ左岸の顔ともいえるホテル・ルテシアの改装に伴うオークション。

下見会も無事に終了を迎え、会期中は入場を制限するほどの盛況ぶりでした。

f:id:jotok:20140518140526j:plain

スイートルーム・エッフェルからの眺め

 

Vente aux enchères au Lutetia

さて、今週月曜日から土曜日まではいよいよオークションです。

月曜日

昨日はホテルが抱える美術品や一部の家具、lot n°1のセザールの彫刻からn°152のミハイル・シュミアキンのブロンズ作品までが競りにかかりました。

その他、アルマン(Arman)の作品やGuillaume Piéchaud、Fernando & Humberto Campanaの家具等、主にホテルの60室あるスイートルームに展示されていた美術品や家具が目白押しでした。

f:id:jotok:20140519190735j:plain

 

火曜日

火曜日10時からはlot n°153−n°471。

サロン・アーネスト(Salon Ernest)、バビロン(Salon Babylone)、オーヴァル(Salon Ovale)、レカミエ(Salon Récamier)の装飾品や7階客室の備品、ポスターや版画、レストラン”Paris”の備品や什器、そして120本のシャンパンが売りに出ます。

f:id:jotok:20140517112255j:plain

 

火曜日14時はlot n°472からlot n°1196。

6階の客室、スイートルーム”パリジャン”の備品、バカラのグラスやカラフ、ルテシアの刻印入りの銀器、食器、カトラリー、調理器具、バスローブ、コンシェルジュやホテル玄関・受付で使用されていた品々、彫刻家Max le Verrierによるアール・デコのランプ、サロン・ポンペイ(Salon Ponpéien)、セーブル(Salon Sèvres)、5階の一部の客室の備品が競りへ。

f:id:jotok:20140520230225j:plain

maxleverrier.com

 

水曜日

21日(水曜日)10時はlot n°1197−lot n°1492。

5階の他の客室、ホテルのストレージ、シガールーム、4階の一部客室の備品が出品されます。

 

水曜日14時はlot n°1493−lot n°2095。

4階客室、ブラッスリーの装飾、備品、食器、カトラリー、120本のシャンパン、テーブルクロス、ドア、3階の一部客室、サロン・サンジェルマン(Salon Saint Germain)、2階の一部客室の備品が競売へ。

f:id:jotok:20140517104337j:plain

 

木曜日

木曜10時はlot n°2096−lot n°2354。

3階の客室、銀器、ベッドカバー。

 

木曜14時lot n°2355−lot n°2962。

2階の客室、正面ホール、大廊下、ホテル外部の装飾品、備品、サロン・ボルゲーズ(Salon Borghèse)、1階の一部客室、120本のシャンパン、サロン・ブシコー(Salon Boucicaut)、ラスパイユ(Salon Raspail)、バスローブ。

f:id:jotok:20140517112519j:plain

 

金曜日・土曜日

金曜日10時から14時はlot n°3000−lot n°3712。

ホテルの業務用什器やレストラン用の什器が出品。

 

土曜日10時から14時はホテルのが抱える5000本にも及ぶワインが競売へ。その中には数多くのロマネ・コンティも。

 

f:id:jotok:20140517154854j:plain

 

競売は現在も参加登録を受付けています。落札手数料は28.8%(税込み)。日本への発送も可能です。

カタログを覗いてみてください。

 

日時:販売会 5月19日(月)ー25日(土)

会場:ホテル・ルテシア 45 Boulevard Raspail, Paris, 75006, France

オンライン:http://www.drouotlive.com

 

参考: 週末はホテル・ルテシアへ

 

 

 

週末はホテル・ルテシアへ

Hotel LUTETIA

 パリ左岸、サンジェルマン・デ・プレ地区の中心に位置するホテル・ルテシア。
 世界で最も歴史のある百貨店ボン・マルシェの対角に位置するこのホテルは、開業以来、多くの著名な芸術家にも愛されてきました。アルベール・コーエンはこのホテルで代表作『選ばれた女』を執筆し、ピカソやマティス、アンドレ・ジッド、ジェームス・ジョイス、サミュエル・ベケット、サン=テグジュペリ、ジャン=ポール・サルトル、アンドレ・マルロー等、多くの著名人を魅了してきました。
 

f:id:jotok:20140517032900j:plain

 

 シャルル・ドゴール元フランス大統領が結婚して最初の夜を過ごしたホテルでもあり、そのスイートルーム・エッフェルがある7階の710号室からの眺めはまさに最高の贅沢。イヴ・サンローランのパトロンとしても知られる実業家のピエール・ベルジェ氏は6階のスイート・パリジャンに12年もの長きに渡って暮らしていました。
 
 1907年より3年に渡って工事が行われ、建築家ルイス・ヒポリト・ボロー(Louis Hippolyte Bolleau)とアンリ・トザン(Henri Tauzin)の手によって建設されました。このホテルの顔とも言えるアールデコのファサードは、レオン・ビネ(Léon Binet)とポール・ベルモンド(Paul Belmondo)の作品です。
 

f:id:jotok:20140517103253j:plain

 

三年間に及ぶ大改装

 1955年以来、ホテル・ルテシアはフランスの名家・テタンジェ家(Taittinger)が所有していましたが、2005年にはアメリカの投資会社であるスターウッド(Starwood Capital Group)によって買収されました。
 そして、2010年7月末には、イスラエルの億万長者であり、投資家のアルフレッド・アキロヴ(Alfred Akirov)が所有する会社(Alrov Group)が1億5000万ユーロを支払い、ホテル・ルテシアの新しいオーナーとなります。
 
 それ以来、今日に至るまでスターウッドの子会社であるコンコルド(Concorde Hotels & Resorts)によって運営されていましたが、2014年4月、改装工事を迎えるために100年を越える歴史に幕が下ろされました。改装工事は今後三年かけて行われる予定で、それにかかる費用はなんと1億ユーロ(約140億円)。文化遺産に指定されているファサードやサロン、Barilletのステンドグラスは今後も保存されますが、231室あった客室やスパ等は全て取り壊されることとなりました。
 

f:id:jotok:20140517030537j:plain

 

オークション

 そして、この大改装に伴い、ホテル・ルテシアのサロンに展示されていた美術品、客室の備品やレストランの備品等、3000点を超える品に加え、8000点にも及ぶワインやシャンパン等を販売するオークションが開催されます。
 美術品に関しては、ヌーヴォー・レアリスムの彫刻家セザールの作品やアルマンの現代美術作品等、珠玉の戦後・現代アート作品が出品されます。その他、客室の机や椅子、ソファ、ランプ、リネン、そしてレストランで使用されていた什器や銀器など、ホテルの100年に渡る歴史が刻み込まれた様々な品が出品されます。
 オークション・カタログは三冊80ユーロで販売されていますが、インターネット上で無料で閲覧することもできます。
 

f:id:jotok:20140517103927j:plain

 

展示会

 この歴史に名を刻むオークションは5月19日(月曜日)から五日間かけて行われますが、18日(日曜日)まではホテル・ルテシア内で下見会が開催されています。普段はまず見ることの出来ないであろうスイート・ルームやいくつかの客室、サロンが公開されており、非常に見応えがある展示会となっています。
 出品される品の予想価格は50ユーロのものから80,000ユーロのものまで幅広く取り扱っており、どなたにも楽しんで頂くことが出来ます。
 オークションでの入札は事前登録が必要不可欠ですが、下見会は一般に公開されています。
 
 今週末はホテル・ルテシアで過ごしてみてはいかがでしょうか?
 
 
日時:展示会 2014年5月15日(木)ー18日(日) 10時ー18時
   販売会 5月19日(月)ー25日(土)
会場:ホテル・ルテシア 45 Boulevard Raspail, Paris, 75006, France
 
 
 

 

美術市場の規模ってどのくらい?

 美術品には芸術的・文化的な側面だけではなく、価値変動が起きにくい資本としての側面がありますが、日本では未だ美術品に対する投資は一般的と言い難いのが現状です。クリスティーズやサザビーズ等、公の場での美術品取引が盛んな欧米では、それらの価値や価格がより明示化されているということもあり、美術品が銀行融資の担保としても広く利用されています。
 
 バブル崩壊、2009年の経済危機、2011年の東日本大震災は日本の美術市場に大きな影響を与えましたが、現在の国内市場の規模はおよそ1000億円程度といわれています。この数字はなんと世界の美術市場の1.67%でしかありません。このような美術品=資本としての役割を日本でもより浸透させることは、国内の美術市場を成長させる上で欠かすことができない今後の課題といえるでしょう。
 
 

f:id:jotok:20140321053846p:plain

©TEFAF.com
 

TEFAF

 3月23日までオランダ、マーストリヒトで開催されているアートフェア「TEFAF」。スイスの「アートバーゼル」やアメリカ版バーゼルこと「アートバーゼル・マイアミビーチ」、フランスの「FIAC」と並ぶ世界最大級のアートフェアであり、世界の美術市場を牽引しているアートフェアのひとつです。
 その歴史は古く、1975年、ピクチュラ・ファインアートフェアという名前で、オールドマスターの絵画や中世彫刻を専門とするビエンナーレとして始まりました。1991年にはアンティークだけでなく、「現代美術部門」も設立されます。現在はさらに「デザイン部門」が併設され、「アンティーク」「現代美術」「デザイン」を中心とした総合的なインターナショナル・アートフェアとなりました。開催当初は28程の出展者が中心でしたが、回数を重ねるごとに出店者・来場者ともに数を増し、現在では295の出展者と10の展覧会、10日間に及ぶ開催期間中は70,000人を越えるコレクターや目利き、キュレーター、そしてその他の美術愛好家で賑わいます。
 

Art Market Report 2014

 TEFAFはアートフェアを開催するだけでなく、2000年より他の専門機関と共同でヨーロッパにおける美術市場の規模や構造の研究を行い、現在はさらに国際的な美術市場を対象にした『Art Market Report』なるものを発刊しています。TEFAFの2014年次報告書『Art Market Report 2014 - The Global Art Market with a focus on the US and China』が2013年の美術市場を総括しているので、KunstpediaBloombergの記事を参考にざっくりとご紹介します。
 
 

美術市場の景気は順調

Sales of art and antiques increased 8 percent from a year earlier to 47.4 billion euros ($65.9 billion), according to a report compiled by Arts Economics and published today by the European Fine Art Foundation in Maastricht, Netherlands. The results fell just short of the record 48 billion euros in 2007.
 アート・エコノミクスが作成し、マーストリヒトのヨーロッパ美術財団が発表したレポートによると、 2013年の美術品や骨董品の売上は474億ユーロ(約6.7兆円)となり、2012年に比べて8%増加しました。この数字は好景気に沸いた2007年の記録、480億ユーロに迫る結果となりました。
 
The value of postwar and contemporary art transactions increased by 11 percent from 2012, reaching its highest-ever auction sales total of 4.9 billion euros as records were established for artists such as Francis Bacon, Roy Lichtenstein and Andy Warhol. Boosted by a 25 percent increase in sales, the U.S. confirmed its position as the international art market leader, representing 38 percent of the market by volume, a 5 percentage point increase from 2012, according to the report.
 フランシス・ベーコンやロイ・リキテンシュタイン、アンディ・ウォーホル作品の記録的な落札の影響もあり、戦後・現代アートの取引は前年比11%増の49億ユーロ(約6916億円)。アメリカでは全売上げが25%増、美術市場全体の38%(前年比+5%)を占める結果となり、世界の美術市場を牽引するリーダーとしての地位を確立しました。
 
 

f:id:jotok:20140321054008j:plain

フランシス・ベーコン『ルシアン・フロイド 三部作』1969
©Christie's Images LTD. 2013
 
The recent rally marks a rebound from 2009, when global art sales had contracted to 28.3 billion euros. With asset prices rising worldwide since then, a growing number of millionaires and billionaires worldwide has been buying art, according to the report. There were 32 million millionaires globally last year, of which 42 percent were based in the U.S. At least 600,000 of the global group are mid-to-high level art collectors, the findings show.
 最近のこの相場の上昇局面は、世界の美術市場が283億ユーロ(約4兆円)に緊縮した2009年からの回復を示しています。報告書によれば、それ以来、資産価格の上昇と共に増え続ける世界中の億万長者が美術品を買っているとのこと。2013年には世界に3200万人の億万長者が存在し、その内の42%は米国に集中していました。その内、少なくとも60万人は中高レベルのアートコレクターであると、調査結果は示しています。
 
“Most high priced works in postwar and contemporary art are being sold in New York, both at auctions and in dealer sales,” Clare McAndrew, a cultural economist who compiled the report, said in a telephone interview. “It’s not just the U.S. buyers. People from Latin America and Asia are buying in New York.”
 報告書をまとめたアート・エコノミクスの創設者であり文化経済学者のクレア・マクアンドリュー博士は、電話インタビューで「オークション、ディーラー間取引の両方において、戦後・現代美術のほとんどの高価な作品はニューヨークで売買されている。買い手はアメリカ人のバイヤーだけではなく、ラテンアメリカやアジアのバイヤーもニューヨークで取引している。」と語ったそうな。
 
 

China’s Role - 中国の役割

 中国は依然、美術市場における最大の新興国です。2011年には美術品の取引額が一時的に米国を上回りましたが、その後は再び第二位に転落、市場全体の24%(前年比-2%)を占めています。イギリスは20%(前年比-3%)を占め、第三位を維持しています。
 

‘Persistent Problems’ - 繰り返される問題

Some of the “persistent problems” plaguing the Chinese art market include late and non-payment by winning bidders at auction, according to the report. A high percentage of unsold auction lots -- 54 percent of all lots offered in mainland China and 44 percent in Hong Kong -- has also dampened the market, indicating resistance to works buyers perceive as “over-priced or not the best examples by the artists,” as well as issues of provenance and authenticity, according to the report.
 報告書によると、中国のアート市場を悩ませている「やっかいな問題」の一つに、オークションでの落札者による未払い、不払い問題があります。香港では44%、中国本土では55%にも及ぶ売れ残りの割合もまた、中国の美術市場の勢いを弱める原因の一つといえるでしょう。購入者が商品に対して抵抗を示す要因としては、「設定価格が高すぎる」あるいは「作家の最良作品ではない」ということだけでなく、作品の来歴や本物かどうかといった信頼性の問題もあげられます。
 
 

f:id:jotok:20130317130327j:plain

©TEFAF.com
 

Online art market - オンライン・アートマーケット

Online sales, a small but rapidly growing segment of the market, generated more than 2.5 billion euros in 2013, the report showed.
“It is estimated that the online art market, including online sales by auction houses, dealers and online-only companies, could grow at a rate of at least 25 percent per annum, meaning that they could exceed 10 billion euros by 2020,” the report found.
 レポートによれば、小さな市場とはいえ急速に成長しているオンライン・マーケットの規模は、2013年時点で25億ユーロ以上(約3500億円)に上りました。
 「オークションハウスによるインターネット競売、オンラインだけで運営している企業やディーラーによるインターネット販売を含むオンライン・アートマーケットは、年率25%以上の割合で成長したと評価されており、これは2020年までに市場が100億(1.4兆円)ユーロを超える可能性があることを意味している」と報告書は判断しています。
 

美術市場の発展

“After recovering strongly in 2010, the global art market has experienced mixed performance within different sectors and between nations,” says Dr McAndrew in the report. “The much more moderate growth in sales over the last three years reflects the fact that different areas of the market have been recovering at different rates. Some sectors and individual businesses have reached peaks well in excess of those achieved in 2007, while others are still struggling to regain momentum.”

 マクアンドリュー博士いわく「グローバルな美術市場は、2010年に大きく回復した後、様々な部門、異なる国家間で種々雑多な動きをみせている。その後三年間のはるかに緩やかな成長は、市場の様々な領域がそれぞれ異なる速度で回復しているという事実を反映しています。いくつかの領域では個々の企業が2007年の業績を上回る結果を出す反面、その他は勢いを取り戻すのにまだ苦労を強いられている。」
 
“The global art market as a whole is less susceptible to major contractions,” McAndrew said. “It’s more diversified. Since the downturn, it’s been up and down for different sectors and different countries.”
「全体的にグローバルな美術市場というのは、深刻な経済的縮小の影響を受けにくい。美術市場は以前より多様化している。かつての低迷以来、様々な部門で、異なる国々で、市場は発展したり縮小したりしている。」
 
以上、アート・マーケットに関する報告でした。
 
『Art Market Report 2014』はTEFAFのサイトにて20ユーロで購入することが出来ます。デジタル版は3月末に出版予定とのこと。