Bathyscaphe - Jotok

Bathyscaphe(バチスカーフ)とはフランスの深海探査艇。パリの深淵より常徳堂がお届けします。

アンティークと深海

 つい先日、パリの友人を介して、日本にかなりクレイジーな番組があると聞き、早速その「クレイジージャーニー」という名を検索していくつかの放送を視聴した。

 それはまさに聞いた通りの面白さ。歴戦の勇者さながら、百戦錬磨の何事にも動じないクレイジーな旅人達が辺境のクレイジーな世界を垣間見せてくれるというもの。

 中でも、深海の調査を通して生命の起源を探求する生物学者の高井研さんの話は、美術畑のしがない構成員でしかない私にもグッと来るものがありました。

 

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 常徳堂(フランスでは”Jotok”)という名の下、西洋骨董から現代美術まで幅広く取り扱い、その他にも美術館での仕事やクリエーターのマネジメント、果ては執筆に至るまで、専門分野でもある「美術市場」という枠組みの中で様々な仕事をさせて頂いておりますが、とりわけ常徳堂の出発点となった西欧のアンティークに関しては、思い入れもひときわ強いというのが本音であります。

 

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 未だ見ぬ古くて美しいモノに出会うため、華やかなオークションハウスやアンティークフェアはもちろんのこと、蚤の市や業者市、その他にも日本人が立ち入るべきでないような泥棒市にまで足を伸ばすというのは最早狂気の沙汰でありますが、幾多の戦禍をくぐり抜け、現在に至るまで誰かの手によって受け継がれてきたモノには何とも言えない美が宿るというもの。

 

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 ひとつのモノが背負う歴史や文化の重みに感動し、その美に魅せられ、束の間でも良いからとついつい手を伸ばしてしまう、というのが我々の性でありますが、それはまるで骨董という名の深海に潜り、飽くなき美を探求するということなのかしらんと、冒頭の高井研さんを見てふと思う。

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 忙しさにかまけて一年ちょっとぶりにこのブログを更新したのですが、今後は名を新たに再開致します。
 ブログのタイトル、Bathyscaphe(バチスカーフ)とはフランス語の深海探査艇。1946年にオーギュスト・ピカールによって発明され、ギリシア語の単語"bathys"(深)と"skaphos"(船)を組み合わせて"bathyscaphe"と命名されたそう。


 常徳堂であることに変わりはありませんが、こちらのブログでは商品の紹介をはじめ、美術市場のこと、アンティーク、近現代美術のことを、パリの深海よりお届けします。

 引き続き、宜しくお願い申し上げます。

 

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*写真は全てバチスカーフ・トリエステ号のパブリックドメインを使用。

ギュスターヴ・クールベ 「画家のアトリエ」修復へ

 昨年2013年9月、フランス・パリのルーブル美術館は《サモトラケのニケ》の修復とニケが展示されていたダリュの階段の大規模な改修工事を開始しました。合計6700名にも及ぶ支援者に手により、修復費用は目標金額の100万ユーロ(約1億4000万円)を達成しました。ダリュの階段の改修工事は2015年春に終了予定とのことですが、ニケの修復の完了間近。そもそもこの修復は、これまでのニケの彫像に関する研究・解釈を覆す新たな発見に端を発するのですが、詳しくは同美術館の特設サイトで御覧ください。
 
 
L'Atelier du peintre
 さて、修復といえば先日、オルセー美術館がかの有名な絵画の修復を発表しました。しかし、世界中の他の美術館同様、お金が足りないので絶賛メセナを募集しています。本日は同美術館から届いたお便りをご紹介します。
 

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Gustave Courbet (1819-1877), L'Atelier du peintre. Allégorie réelle déterminant une phase de sept années de ma vie artistique et morale, Entre 1854 et 1855, Huile sur toile, H. 361 ; L. 598 cm, Paris, musée d'Orsay
© RMN-Grand Palais (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski
 
 
Acquis par l'État à l'aide d'une souscription publique en 1920, le tableau L'Atelier du Peintre (1854-1855) de Gustave Courbet est un chef-d'œuvre universel qui fait partie de notre patrimoine culturel. Après avoir traversé plus d'un siècle d'histoire mouvementée, cette toile de 22 m² a maintenant besoin d'être restaurée. 
 1920年、公的な募金によって政府が入手したギュスターヴ・クールベの絵画「画家のアトリエ」はフランスの文化財の中でも世界的な傑作といえるでしょう。100年という激動の歴史を経て、現在この22m²のキャンバスは修復を必要としています。
 

Ce trésor appartenant à tous, le musée d'Orsay fait de nouveau appel à la générosité du public pour aider au financement de sa restauration et permettre au plus grand nombre de participer à ce projet, au-delà des mécènes traditionnels. Exceptionnellement, l'œuvre sera restaurée sur son lieu d'exposition et les visiteurs pourront suivre l'évolution du travail des experts au quotidien, pendant plusieurs mois.

 

 万人の宝ともいえるこの絵画ですが、オルセー美術館はこの度、これまで伝統的なメセナ活動を超えて、さらに多くの人々がこの傑作の修復費用に関して寄付を行うことができるよう訴えを新たにしました。例外的に、作品は公共の展示場で修復されることとなり、美術館への訪問者は数ヶ月間に渡り、専門家による修復の過程を垣間見ることが出来ます。
 
 美術品や文化財の保護、保存、修復、研究、展示、教育は美術館の使命でありますが、そのためには莫大の費用が投入されており、その費用をいかに捻出するかというのは訪問者数世界一を争うような有名美術館にとっても悩みの種といえそうです。
 
 
 
 

ホテル・ルテシア 3.7億円の売り上げに

 

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© FRANCOIS GUILLOT/AFP

ホテル・ルテシアの競売も無事に終了し、オークションの歴史に新たなページが書き加えられました。同時に、今後三年にも及ぶ大改装を迎えたホテル・ルテシアは、これから新たな歴史を歩み始めることになります。

フランスのメディア、ouest-franceの記事をざっくり訳しています。

La vente du mobilier, d'oeuvres d'art et de bouteilles de vin prestigieuses, mis aux enchères cette semaine par le mythique hôtel parisien Lutetia, qui a fermé mi-avril pour rénovation, a rapporté au total 2,667 millions d'euros (frais inclus), légèrement au-delà des estimations.

"Je suis content de la vente, nous avons fait sans problème un peu plus que l'estimation haute", a déclaré le commissaire-priseur Antoine Godeau, A titre de comparaison, la vente du Crillon, en avril 2013, avait rapporté près de 6 millions d'euros (frais inclus).

Selon Antoine Godeau, "il y a eu un vrai engouement de la part des gens qui sont venus acheter des souvenirs". Des fauteuils gondole, qui meublaient les chambres, se sont ainsi vendus près de quatre fois l'estimation initiale. Première pièce mise en vente, un torse en bronze du sculpteur César, estimé à 20 000 €, a été adjugé à 38 640 € (avec frais).

 

 改装のため今年四月に門を閉ざしたパリ随一の荘厳なホテル・ルテシアで行われた家具、美術品、高級ワインのオークションは、266万7000ユーロ(手数料込み・約3億7260万円)を売り上げ、予想価格の合計を少し超える結果となりました。

 ピエール・ベルジェ&アソシエ(オークション会社)の主任競売吏アントワーヌ・ゴドー氏は「競売も問題無く終わり、予想を少し上回る結果となったことに満足している。」と述べました。ちなみに、2013年にパリのコンコルド広場に建つホテル・ドゥ・クリヨンで行われた同様の競売は600万€(手数料込み・約8億3800万円)を売り上げました。

 アントワーヌ・ゴドー氏いわく「この度の競売には、ホテル・ルテシアとの思い出を買いに来てくれた人々の純粋な情熱がありました」。客室を飾っていたイージーチェアなどは落札予想価格の4倍近い価格で落札されました。ロットナンバー1の彫刻家・セザールによるブロンズは2万ユーロと予想されていましたが、最終的には3万8640ユーロ(手数料込み・約540万円)で落札されました。

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© Pierre Bergé & associés

ホテル・ルテシア、いよいよオークションへ

前回の記事で紹介したパリ左岸の顔ともいえるホテル・ルテシアの改装に伴うオークション。

下見会も無事に終了を迎え、会期中は入場を制限するほどの盛況ぶりでした。

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スイートルーム・エッフェルからの眺め

 

Vente aux enchères au Lutetia

さて、今週月曜日から土曜日まではいよいよオークションです。

月曜日

昨日はホテルが抱える美術品や一部の家具、lot n°1のセザールの彫刻からn°152のミハイル・シュミアキンのブロンズ作品までが競りにかかりました。

その他、アルマン(Arman)の作品やGuillaume Piéchaud、Fernando & Humberto Campanaの家具等、主にホテルの60室あるスイートルームに展示されていた美術品や家具が目白押しでした。

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火曜日

火曜日10時からはlot n°153−n°471。

サロン・アーネスト(Salon Ernest)、バビロン(Salon Babylone)、オーヴァル(Salon Ovale)、レカミエ(Salon Récamier)の装飾品や7階客室の備品、ポスターや版画、レストラン”Paris”の備品や什器、そして120本のシャンパンが売りに出ます。

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火曜日14時はlot n°472からlot n°1196。

6階の客室、スイートルーム”パリジャン”の備品、バカラのグラスやカラフ、ルテシアの刻印入りの銀器、食器、カトラリー、調理器具、バスローブ、コンシェルジュやホテル玄関・受付で使用されていた品々、彫刻家Max le Verrierによるアール・デコのランプ、サロン・ポンペイ(Salon Ponpéien)、セーブル(Salon Sèvres)、5階の一部の客室の備品が競りへ。

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maxleverrier.com

 

水曜日

21日(水曜日)10時はlot n°1197−lot n°1492。

5階の他の客室、ホテルのストレージ、シガールーム、4階の一部客室の備品が出品されます。

 

水曜日14時はlot n°1493−lot n°2095。

4階客室、ブラッスリーの装飾、備品、食器、カトラリー、120本のシャンパン、テーブルクロス、ドア、3階の一部客室、サロン・サンジェルマン(Salon Saint Germain)、2階の一部客室の備品が競売へ。

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木曜日

木曜10時はlot n°2096−lot n°2354。

3階の客室、銀器、ベッドカバー。

 

木曜14時lot n°2355−lot n°2962。

2階の客室、正面ホール、大廊下、ホテル外部の装飾品、備品、サロン・ボルゲーズ(Salon Borghèse)、1階の一部客室、120本のシャンパン、サロン・ブシコー(Salon Boucicaut)、ラスパイユ(Salon Raspail)、バスローブ。

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金曜日・土曜日

金曜日10時から14時はlot n°3000−lot n°3712。

ホテルの業務用什器やレストラン用の什器が出品。

 

土曜日10時から14時はホテルのが抱える5000本にも及ぶワインが競売へ。その中には数多くのロマネ・コンティも。

 

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競売は現在も参加登録を受付けています。落札手数料は28.8%(税込み)。日本への発送も可能です。

カタログを覗いてみてください。

 

日時:販売会 5月19日(月)ー25日(土)

会場:ホテル・ルテシア 45 Boulevard Raspail, Paris, 75006, France

オンライン:http://www.drouotlive.com

 

参考: 週末はホテル・ルテシアへ

 

 

 

週末はホテル・ルテシアへ

Hotel LUTETIA

 パリ左岸、サンジェルマン・デ・プレ地区の中心に位置するホテル・ルテシア。
 世界で最も歴史のある百貨店ボン・マルシェの対角に位置するこのホテルは、開業以来、多くの著名な芸術家にも愛されてきました。アルベール・コーエンはこのホテルで代表作『選ばれた女』を執筆し、ピカソやマティス、アンドレ・ジッド、ジェームス・ジョイス、サミュエル・ベケット、サン=テグジュペリ、ジャン=ポール・サルトル、アンドレ・マルロー等、多くの著名人を魅了してきました。
 

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 シャルル・ドゴール元フランス大統領が結婚して最初の夜を過ごしたホテルでもあり、そのスイートルーム・エッフェルがある7階の710号室からの眺めはまさに最高の贅沢。イヴ・サンローランのパトロンとしても知られる実業家のピエール・ベルジェ氏は6階のスイート・パリジャンに12年もの長きに渡って暮らしていました。
 
 1907年より3年に渡って工事が行われ、建築家ルイス・ヒポリト・ボロー(Louis Hippolyte Bolleau)とアンリ・トザン(Henri Tauzin)の手によって建設されました。このホテルの顔とも言えるアールデコのファサードは、レオン・ビネ(Léon Binet)とポール・ベルモンド(Paul Belmondo)の作品です。
 

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三年間に及ぶ大改装

 1955年以来、ホテル・ルテシアはフランスの名家・テタンジェ家(Taittinger)が所有していましたが、2005年にはアメリカの投資会社であるスターウッド(Starwood Capital Group)によって買収されました。
 そして、2010年7月末には、イスラエルの億万長者であり、投資家のアルフレッド・アキロヴ(Alfred Akirov)が所有する会社(Alrov Group)が1億5000万ユーロを支払い、ホテル・ルテシアの新しいオーナーとなります。
 
 それ以来、今日に至るまでスターウッドの子会社であるコンコルド(Concorde Hotels & Resorts)によって運営されていましたが、2014年4月、改装工事を迎えるために100年を越える歴史に幕が下ろされました。改装工事は今後三年かけて行われる予定で、それにかかる費用はなんと1億ユーロ(約140億円)。文化遺産に指定されているファサードやサロン、Barilletのステンドグラスは今後も保存されますが、231室あった客室やスパ等は全て取り壊されることとなりました。
 

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オークション

 そして、この大改装に伴い、ホテル・ルテシアのサロンに展示されていた美術品、客室の備品やレストランの備品等、3000点を超える品に加え、8000点にも及ぶワインやシャンパン等を販売するオークションが開催されます。
 美術品に関しては、ヌーヴォー・レアリスムの彫刻家セザールの作品やアルマンの現代美術作品等、珠玉の戦後・現代アート作品が出品されます。その他、客室の机や椅子、ソファ、ランプ、リネン、そしてレストランで使用されていた什器や銀器など、ホテルの100年に渡る歴史が刻み込まれた様々な品が出品されます。
 オークション・カタログは三冊80ユーロで販売されていますが、インターネット上で無料で閲覧することもできます。
 

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展示会

 この歴史に名を刻むオークションは5月19日(月曜日)から五日間かけて行われますが、18日(日曜日)まではホテル・ルテシア内で下見会が開催されています。普段はまず見ることの出来ないであろうスイート・ルームやいくつかの客室、サロンが公開されており、非常に見応えがある展示会となっています。
 出品される品の予想価格は50ユーロのものから80,000ユーロのものまで幅広く取り扱っており、どなたにも楽しんで頂くことが出来ます。
 オークションでの入札は事前登録が必要不可欠ですが、下見会は一般に公開されています。
 
 今週末はホテル・ルテシアで過ごしてみてはいかがでしょうか?
 
 
日時:展示会 2014年5月15日(木)ー18日(日) 10時ー18時
   販売会 5月19日(月)ー25日(土)
会場:ホテル・ルテシア 45 Boulevard Raspail, Paris, 75006, France